00● 福祉環境への取組み
 人にとって、真に快適で、安全で、信頼できる場所。それはその人の住宅です。福祉建築の基本は住宅と考え計画すべきであると思います。まず、高齢者や障害者が自分の住宅に住み続けるためにはどのような改良を施せばよいのかそこに焦点をあてて考えます。仮にどうしても福祉施設に入所しなければならないのなら、そうした施設は「施設であることを起点とした建築物」ではなく、「住宅を起点とした建築物」でなくてはなりません。病院を「家」と思うことに抵抗はありますが、病院としての機能を持った「家」ならば、そこに安心と安逸を生むことができます。

 「住宅は生活の基盤であるという基本的な考え方のもとに、具体的な問題を適切に対処することを目的に設計に取り組んでいきます。
00 人に優しい環境の提案
 バリアフリーに関する概念も、現在では世間に広く周知されています。人の健康を損なわない建材の使用も常に配慮して「人に優しい建築」を心掛けます。
昨今様々な化学物質に囲まれた現代の住宅は、住む人に安らぎをもたらすどころか、人々の健康を損なう危険な可能性を指摘されシックハウスという言葉が広く喧伝されていますが、建築の安全性にたいし研究を行い、材料の安全性に配慮して設計を行うこと、そうした建物を設計することに取り組んでいきます。

 身体にとって本当に快適な環境とは、空調機器によって温度調整された人工的な環境ではありません。夏はできる限り自然通風で暑さをいやし、冬は高断熱による暖かな室内を実現しつつ、気軽に外部とのアクセスを行える空間構成を行う。そんな四季を感じさせる家は人の身体が本来持つ環境適応能力を呼び戻す本当の快適な環境を作り出します。
00● シックハウスとは
 日本においてシックハウスという言葉が強く注目され始めたのは90年代に入ってからです。オイルショックの反省から「省エネルギー法」が制定され、住宅の断熱基準が規定され、高気密・高断熱の「魔法瓶建築」が奨励されました。しかし、一方ではこうした建築の増加とともに様々な体調不良が、各種調査の結果、建築材料を源とする空気汚染に原因されることが分かってきたのです。もちろん以前も同様な建材は使用されていました。しかし、そうした材料の一般化と建築の高気密化がそうした発症を顕在化し、本格的な調査研究を促し、原因の明確化をもたらしたのです。

 一番の被害者は子供・高齢者・ペットなどの抵抗力の弱い家族です

 調査の結果、シックハウスの悪影響をもっとも受けるのは、子供・高齢者・ペットだということが分かってきました。いうまでもなく、子供・高齢者・ペットは家族の中で一番抵抗力が弱い存在で、それだけ室内空気の汚染の影響を受けやすいことは理解できます。

整理すれば下記のようになります。
1. 室内の滞在時間が長い。またその滞在時間を自分でコントロールしにくい。
2. ホルムアルデヒド等の汚染物質は、空気よりも重く、一般成人よりも堆積した汚染空気を
  吸引しやすい。
3. 子供は体調の不良を的確に表現できず、単に機嫌が悪い、だだをこねると周囲に判断さ
  れて根元的な対処に結び  つきにくい。
4. 基本的に体力、耐性が弱く、一般成人と比較して影響を受けやすい。
5. 機械的な「快適さ」に順応した結果、抵抗能力や環境適応能力、免疫力、自然治癒力
  が低下している。
00 現在の建物は改善されてきましたが
 平成15年7月の建築基準法の改正により建築材料の等級や種類、数量に応じて換気基準が設けられ健康建築への取り組みは進歩してきました。シックハウスの原因となる建築材料は、廉価で汚れにくく、メンテナンスがしやすいことを目的に、高度成長に開発された新建材を主としますが、現代の建築に採用される材料ははそうした建材が圧倒的に多いのです。汚れてもふき取れば簡単に汚れの取れるビニール壁紙、低コストで家具や壁下地を構成する合板、濡れても影響を受けない複合フローリングやエンビマット床材、更にそれらを固定する接着剤は室内空気汚染の代表格であるホルムアルデヒドのまさに放出源でしたが現在ではそのほとんどが使用されなくなりました。

 シックハウスによる化学物質過敏症がアトピー・アレルギー増加の一因です

 現代人の43%が何らかのアレルギー経験を持つという統計数字があります。幼児においてもその傾向は顕著で、未就学児童の4人に1人が、アトピー性のアレルギー疾患を抱えているといわれています。
一時期、ダニがハウスダストの原因として様々な防ダニ処理のされた商品が出回ったことがあります。そうした商品がいくらポピュラーになっても、アレルギー・アトピーはいっこうに減らないどころか、増加の傾向を止めようとはしません。しかしそれも無理はありません。ダニはアレルギーの素因(アレルゲン)ではありますが、アレルギー体質を作り出す根元的な要因は別にあるからです。

 化学物質を一時期的に多量に被爆した場合、もしくは少量でも長期間にわたって浴びた場合、人の体内の神経システムは、特定の物質に対し過剰な防御反応を示すようになります。これを化学物質過敏症と呼びます。いったん化学物質過敏症になるとその物質がたとえ1ppm(100万分の1g)であっても神経が異常にかつ短時間に反応を起こし、めまい、吐き気、アトピー等の疾患等を示すようになります。化学物質過敏症の怖いところは、ある特定の化学物質に過剰反応(これを感作と呼びます)するようになると次第に他の化学物質にも感作するようになることです。これを多発生化学物質過敏症といい、これが重度に進行するとふつうの社会生活が困難になることさえあります。
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